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谷口雅春さんの「利尻麒麟獅子」稿

谷口雅春さんの「利尻麒麟獅子」最終稿が「北海道マガジンKai」に掲載されました。

http://kai-hokkaido.com/feature_vol50_rishiri3/

いつもながらのシャープな切り口だと、感嘆しています。ぜひご高覧ください。

谷口さんは、私の北海道時代、カイが紙面媒体だった時からの盟友ライターです。

奇しくも、現在制作中の拙作が『移住』です。来年春に刊行予定です。拙作の『移住』は、強いられたものとしての「移住」を扱っていて、谷口稿での「移住」の多様性や重層性という視点から見ると、極めて偏狭だと叱られそうです。ですが、そういった批判こそが、実は楽しみなのです。

谷口さんの写真です(谷口さん、無断使用でごめんなさい)。

 

 

 

 

 

「世界は人間なしに始まり、人間なしに終る」展

国立台湾美術館での展覧会「The world began without the human race and it will end without it.(世界は人間なしに始まり、人間なしに終る)」が、23日から始まりました。

台湾在住のキュレーター、山名祭里さんから写真が届きましたので見てください。

現地に行くことはできませんでしたが、117日のアートフォーラムには、オンラインで参加します。

オープニングの様子は、後日youtubeにアップされるようです。

 

ホリゾントの、向かって右側が拙作、左は新井卓さん、手前は宮永愛子さんの作品。

写真はすべて「自然史」から。

東北太平洋岸

福島-帰還困難区域

木屋平の水道組合

 3月の「しだれ桜」、5月の紫陽花に続く「木屋平通信」の3回目です。5月に木屋平から持ち帰り、挿し木した紫陽花は、3株が根づいて、小さな葉を出しています。刻々とした歩みですが、良いとは言えない環境にも耐えている植物の力はすごい。

木屋平から来た紫陽花たち。

 

 

 

 で、今回は、以前木屋平に住む友人Yさんから聞いて、気になっていた地域水道組合について報告します。

 四国山脈の北側に位置する徳島県美馬市木屋平下名の集落は、水源から貯水施設へ、そこから各家庭への配水システムを自主管理してきました。自主的な組合員の労働と自治会費から捻出した維持費で運営してきたそうです。以前は13世帯であったその集落も、今は5世帯になり、当然今後の運営は楽観できませんが、可能な限り継続していただきたいと願うばかりです。

消火用水のタンクを利用した貯水槽

 

これがその水源。美しい。

 

 

 

 

さらに上にある、砂防ダムを利用した貯水槽。

 

今は使われていない浄化槽。

 

水源への案内はさらに上にあり、断られました。私も即座に同意。

これは、貯水槽近くの、身を投げた平家の女官を祀った祠。中は移転したそうです。

 

周りは高度成長期に植林された杉林。ほとんど保水能力をなくしているのが見た目でも明らかです。ほかの樹木も、虫などの生物も見当たりません。荒廃の極みです。

 

鹿に食べられた友人宅の庭の花。

以前はほとんど見かけたことのない猿や鹿が、最近は頻繁に目撃できる。そのかわり、たくさんいた小鳥や虫が少なくなった。このことは深く考えるべきことを、多く示唆していると思われます。

友人の住む集落の遠望です。

 

 毎日新聞75日夕刊の紙面で「宮城県議会は5日、上下水道と工業用水の20年間の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」の関連議案を賛成多数で可決した」と報じられています。「人口減や設備の老朽化による利用者の負担増を抑えるため」というのが建前ですが、外資を含めた企業グループに運営権を設定することには、危うさを感じます。水はいうまでもなく私たちの生きるための共有財産「コモン」です。それを利益追及の対象にすることには、途轍もない違和感があります。

 一方で、久元喜造神戸市長は、阪神淡路震災の経験から、水道の民営化はやらないと(同時にカジノもやらないとも)断言しています。この四半世紀のうちに未曾有の第災厄を経験してきた自治体の首長や議会の、この判断の差異はいったいどこから来るのか。のちの歴史が彼らに下す評価は、すでに歴然としていると思います。

 徳島県吉野川市にある父の家の家には井戸があり、子供の頃は、のぞくと石垣に生えたシダの間から、井戸の水面が見えました。今はそんなものは見えず、かつての水面から10メートルほどのパイプを打ち込み、やっと水を得ています。吉野川という大河の近くの地域でさえそうなのです。知り合いの、意欲的に農業を企業として営んでいる農業者は、水や気候の問題に直面し、非常な危機感を抱いています。彼によれば、日本の農業は、存亡の危機にあると言います。