自然史

 北海道の空知地方に散在する、石炭産業を中心に形成された夕張、三笠などの諸地域。日高山脈に源流を持ち日高地方西部を流れる沙流川中流域にダムが建設されたことで出現した湖により、先住民族アイヌの生活や儀式の場などが水没した地域。石狩川水系千歳川の支流であり、かつては、アイヌ文化形成の重要な経済的基盤でもあった漁川上流域。古代の徳島で、忌部と呼ばれる集団にかかわるとされている文化が成立していた吉野川中流域。東日本大震災の被災地である青森、岩手、宮城、福島にわたる長大な太平洋沿岸と、東京電力福島第一原子力発電所の事故により高濃度の放射性物質が飛散し堆積した福島太平洋岸の地域。さしあたって「自然史」は、それらの場所を対象としてきた。
 ここで撮られたものは、主に、大地とそこに繁殖する植物、そこを流れそして溜まる水などの諸様態であり、異なった諸空間のそれぞれに、徐々にしかし着実に浸透してくる「自然」と呼ばれるものである。(写真集「自然史」より)